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セザム人間模様  ~愛すべき教え子たち~  (2004.3.20)     

お約束どおり、すぐに書くことにしました。今回のテーマは「セザム人間模様」。
私の本や書店の話ばかりでは、さすがに飽きたことでしょうし……。

その前に一つお知らせがあります。
私がやっていたセザム進学会という塾は今年の2月をもって閉めることになりました。18年間中学生と高校生に教え続けてきましたが、セザムは出版社として新たな道を進んで行くことになります。『英単語呂源2』の私のプロフィールにもありますが、アルバイトで始めた塾講師が本業となり、勤続25年。思えばよくもこんなに長い間教えてきたなあー、といった感じです。この四半世紀に何人の生徒たち(それとお母さん)に接してきたことか? もう数え切れない。でも、教師というのは面白いもので、教えた生徒はちゃんと覚えているものなんですね。とくに私のやっていた塾は少人数で、スタッフが塾生一人一人に限りなく愛情を注いでいたし、みなさんも楽しく生き生きと勉強していたので、暖かい人間的な交流がいつまでも心に残って、思い出が薄れないのかもしれません。その意味でセザム進学会は、永遠に不滅! だと思います。(なんだが長島さんみたいですが…。)

塾をやめて、通っていた生徒たちはどうしたのかといいますと、数学の田中先生が、すぐ近くに教室を開き、講師もろとも(机もイスも参考書も持って)連れていきました。セザム進学会マイナス1名(私)で、塾の名前は「ワイズ・アカデミー」。
そして、私はここの名誉講師になりました。教えることが大好きな性分なので、ムズムズしてきたら、勝手に教えにいくことになっています。もちろんロハで。

さて、いつまでも感傷に浸っているわけにはいきません。前回ちょっと触れた「セザム忍者部隊」の話から入りましょう。
隊員3名みんな私の教え子ですが、003(男で就職浪人)と004(女子高生)はあまり働いていないので、この際002を紹介しましょう。なんと3月20日(今日)が誕生日で、23歳になりたてのほやほや、童顔で下半身ばかりが発達した(足がすごく長い)サッカー狂の男であります。
セザム本部(ワンルーム・マンションの一室で、仲間内では「アジト」と呼んでいる)のカレンダーには、20日のところを丸で囲って、「Sのバースデー」とある。もちろんこれ見よがしに002が自分で書いたものですが、字のなんとヘタなこと! でも、かわいそうだから、ケイタイで「おめでとう」くらい言ってやるかな?いちばん一生懸命そして長時間セザムのために(私のために)尽くしているヤツだし……。今、ほんとに電話しました。すごーく喜んで、「お気遣い、ありがとうござい…」で声を詰まらせておりました。きっとケイタイを握り締め、感涙にむせんでいることでしょう。

この男、折角大学へ入れてやったのに、卒業したら、就職口がない。音楽関係の会社が希望で、十数社の採用試験を受けすべて落ちている、哀れなプータローなんです。で、私がお小遣いをやったり、飯を食わせたりしてやっている。
「僕はセンセ(先生)の森蘭丸です」なんて言って、お付きの者気取り。まあ、それも無理はない。高1の始めに私の家来になって、もう7年以上主従関係が続いているのだから。002は書店回りをいちばん多くやっていて、全部でもう200店は回ったほど。さすがに書店の良し悪しを見る目が肥えてきた。しかし、オンナに飢えた若い男だけあって、評価の基準が極めて不純である。可愛い女店員がいれば、書店のランクがぐーんと上がる、といった具合。たとえば、一日がかりの遠征から帰って来ると、アジトでこんな密談が交わされる……。

「センセ! ユウリン堂に、目パッチのすげー可愛い子がいてー」
「そうか。で、名前、抜かりなくメモしてきたな」と私。
「はい、はるばる町田まで行った甲斐がありましたよ。」
と、ポケットから取り出したくちゃくちゃのメモには、似顔絵までが……。
「今度、わしが検分に行こう。ほかに収穫は?」
「八王子の三省堂には、美人が一人いて…。『たんごろげん』、その人に問い合わせて、買っておきました。」
「それはでかした。で、どういう風に美人なんだ。芸能人でいうと?」
もう、『単語呂源』の販売状況なんか二の次である。

ちなみに、002は、字もヘタ、漢字も書けないヤツだが、なぜか文章はうまい。
セザムで学んだ同期の連中とBBSとかいうインターネットの掲示板を持っていて、そこに寄稿した私の陰口がふるっている。(実は私の娘がネット喫茶でこの掲示板を発見。私にバレてしまった!)

タイトル:生類憐みの令

<セザム存続の危機に陥り、ついにさらに狭いとこに引っ越した藤井セザム。奴の人生は今9回裏ツーアウト、満塁ながら3対0で負けています。そこで藤井セザム最後のチャンスを『単語呂源』と言うダジャ単の本にかけ出版しました。これを失敗したら、奴の明日食う飯がありません。紀伊国屋やら三省堂などではもうあるらしいので、「是非新宿の紀伊国屋で買ってくれ」だそうです。『生類憐みの令』が公布されたと思って買ってやって下さい。>(犬公方)

この反響がすごい。返信したのはみんな私の教え子である。

<生類憐みの令って……いつのまにか藤井は覇王から畜生レベルまで落ちたということか。懐かしくもあり、また哀しくもあるな。まさに盛者必衰というやつだな。そしてこれが世の中の理なのだろうか。>(通りすがり)

<やばい、まだ買いに行ってないんだけど。売り切れちゃうかな…? 早く買わなきゃ! 藤井がホームレスになっちゃう。>(100%OLよろしく)

この返信文を書いたヤツ、俺には誰だかわかっとるぞ!

2004.3.20 キス。



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